【おすすめ】出版業界がテーマのお仕事小説特集
こんにちは、宮乃諾菜[@miyano45]です。
本好きならば、出版業界にあこがれを持つのは自然の摂理。(自然の摂理か??)
お仕事小説はフィクションでありながらその空気感を知ることができて楽しいものです!
電子書籍は救世主となりうるか『#電子ハック』柳井政和(文芸春秋)
小説(紙)が大好きな主人公・春日枝折は憧れの出版社に就職したものの、配属先は文芸編集部ではなく電子書籍編集部だった。
電子書籍は紙の本を駆逐する悪魔か、それとも出版界を救う救世主なのか!?
文学少女が編集者として一人立ちしていく姿を追いながら、変貌する出版界の明日を占うお仕事小説。(Amazonの内容紹介より引用)
本書は電子書籍オリジナル小説。cakes(ケイクス)で連載されてます。
電子書籍を個人で出すか出版社から出すか、出版社から出すメリットなど編集者としては耳の痛い話もあり、四苦八苦する姿がえがかれます。
また本書の出版は実験的にネット連載→電子書籍化の流れを採用しています。
もしこの出版フローが上手くいけば、ネット連載→電子書籍専売でも主力商品になるという前例が作れるでしょう。ただ、出版社としての影響力がインフルエンサーなどの個人やテレビと比べて圧倒的に弱いので、出版社のマーケティングの変化に期待。
売り上げから見て世間はまだ圧倒的に紙の本を支持していますが、紙派電子書籍派とわず読書家には読んでもらいたい本です。
【関連サイト】
#電書ハック【文春e-Books】【電子書籍】[ 柳井政和 ] 価格:880円 |
本の顔を作ります『装幀室のおしごと。』範乃秋晴(メディアワークス文庫)
本の顔であるカバーのデザインなど本の装幀に焦点を当てたお仕事小説です。
小説では表紙の威力(?)は絶大です。ジャケ買いする人でなくとも、表紙や中身のデザインによって「面白そう、関心がある」と感じて手にとります。
主人公・本河わらべは読者に手に取ってもらうために頑張る装幀家(本フリーク)です。なので本の原稿は読みこみ、「本の気持ちになって」ブックデザインをします。あるとき出版社が合併するので、仕事のやり方をすり合わせるために二人一組で仕事をすることになります。ペアになった巻島はベストセラーを連発する装幀家。本の顔であるのに、巻島は原稿を読まずにデザインをします。本河はこれに反発しますが、「売れたらよい」とする巻島にけむに巻かれます。反発しあいながらも良いブックデザインを作るために頑張るお話です。ハッピーエンドです。
フィクションですので鵜呑みは危険ですが、本のデザインがどのような流れででき上がっていくのか、知ることができて新鮮でした。お仕事小説としては編集者と作家のコンビが多いので。
デザインする際、原稿を読んでいるか否かで対比されているのが印象的でした。二人がなぜ原稿を読み込む/読まないのか、彼ら自身の背景が深くかかわっています。
読み終えたときわたしは「末永く仲良くして」って思いました。(小並感)
【関連サイト】
装幀室のおしごと。 ~本の表情つくりませんか?~ (メディアワークス文庫) [ 範乃 秋晴 ] 価格:680円 |
『校閲ガール』宮木あや子(角川文庫)
誤字脱字・事実確認をしてくれるエキスパート部門。それが校閲部。そこに配属されてしまった河野悦子(こうの・えつこ)、略して校閲ーーーーー?! ファッション雑誌大好きウーマンである彼女は上司に「校閲頑張ったら移動できるかもよ」とそそのかされ、彼女の思う校閲をする。周りを巻き込んでハッピーエンドを迎えるお仕事小説。
価格:604円 |
ドラマ公式サイト
読了- 『先生、原稿まだですか!』織川制吾
──アイとはなんでしょう。私はどうしても其れが判からないのです。
これは小説家・御陵或(みささぎ あるい)の著作『アイとはなんでしょう』の冒頭の一文だ。それを目にした瞬間から、わたし平摘栞(ひらづみ しおり)の世界は変わった。
引用『先生、原稿まだですか!』(P.6)
これは織川制吾の『先生、原稿まだですか!』の冒頭部分だ。本屋でこれを読んだ瞬間、私は「『一冊の本』が他人の人生を変えたエモい話では?」と直感的に感じた。
気が付くと私はこの本を手にレジへ並び、購入していた。
【好きポイント】
主人公は平摘栞という新卒で出版社に入社した新米編集者である。広島出身である彼女はテンションが上がると方言が出るのだ。かわいい、うむ。
特にこの作品は「一つの作品によって人が価値観を変え、そのひとにとって未知の世界で葛藤しながら頑張る」系で、私の好みドンピシャなのです。
ひとによってはもやもやする点だと思うけど、私はこの本を読み終えたときにタイトルを叫んでしまった。
「先生、原稿まだですか!」と。
【個人的な不満足であるポイント】
- 文体の好みの不一致。
これだけ。私の好みの問題。
最後に作家だろうが会社勤めだろうが、締め切り過ぎて提出物を催促されるようなことは絶対に回避したいと心に決めた。
【基本データ】
公式紹介ページ
先生、原稿まだですか! 新米編集者、ベストセラーを作る | 織川制吾 | 集英社オレンジ文庫
タイトル : 先生、原稿まだですか! 新米編集者、ベストセラーを作る
作者 : 織川制吾(おりかわ・せいご)
レーベル : 集英社オレンジ文庫
出版社 : 集英社
ISBN : 978-08-680134-8
定価 : 560円+税
【楽天ブックス】
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読了-『校閲ガール』by 宮木あや子
本作品は「校閲」という職業で働く女性のエンタメ作品。
連作短編形式で、一話ごとに校閲する作品が変わる。
こう えつ かう- 0【校閲】
( 名 ) スル
印刷物や原稿を読み、内容の誤りを正し、不足な点を補ったりすること。 「原稿を-する」 「 -を受ける」 『大辞林 第三版』より
出版される印刷物でほぼ必ず通る(多分)校閲。世間での知名度は決して高くないが出版業界に関わる人や関わりたい人ならばおそらく聞いたことがある仕事である。
私は同人誌を数冊出しているが、恥ずかしながらこの本で校閲の仕事という仕事の詳細を知った。この本というより、この『校閲ガール』を原作にしたドラマ『地味にすごい!校閲ガール・河野悦子』を視聴して知った。(一話しかみなかったが。)
地味にスゴイ!DX 校閲ガール・河野悦子 [ 石原さとみ ] 価格:3,078円 |
ドラマを見たとき、出版業界にあこがれを持ちながらも知らなかったことに、「まだまだあこがれの業界に関して知らないことがあったのか! やっぱり好き(意味不明)」という感想を抱いた。これ以上ドラマの事をかくと話がそれるので割愛するが、とても興味をそそられた。
そして先日ドラマ放送より大分時間が経ってしまったが、購入・読了した。
この本やドラマを見るにあたって、一番重要なことは「この作品がフィクション」だということ。実際に働いている人から見れば、新人ではありえないなどの声もあるようだ。けれどもこれはフィクションであり、エンタメ作品である。変に現実に合わせるのはリアリティではない。
主人公・河野悦子はファッション雑誌しか読まず、ファッション雑誌の編集者を希望して景凡社に入社するが配属されたのは校閲部。二年目の彼女は上司のエリンギに「もしかしたら頑張って優秀だと希望の部署に配属されるかも(要約)」といわれて日々仕事をこなす。そんな日々の中で大御所作家のエロミス小説や覆面作家の独特な小説などを悦子は校閲する。新人の悦子は奮闘しながら校閲をするが、誤字脱字もだが物語上のつじつま(新幹線の時刻など)を実際に足を運んで確認する姿はとても新人ゆえの努力であると感じる。
どの話も読みやすく、ドラマでも見たあのテンポの良い会話が文章上で織りなされている。ドラマという映像作品にたいして文章である小説は悦子が校閲している文章が登場している。もちろん、作者の宮木あや子先生が書かれているのだが、第二話に登場する是永 是之(これなが これゆき)の書き下し、第三話に登場する時代小説の文体は校閲ガール全体のリズミカルなものとは違ったテイストの文章である。しかも校閲前のもので直後に悦子が校閲部分をしているため、「なんちゃって校閲-お試し版-」ができるわけである。楽しい。暇があればやってみるといいだろう。
会話重視のテンポの良い作品なのでドラマからという人も、普段小説は読まないと言う人も比較的楽に読めるだろう。
【基本データ】
タイトル : 校閲ガール
作者 : 宮木あや子
レーベル : 角川文庫
出版社 : KADOKAWA
ISBN : 978-4-04-104220-5
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